動く機械、特に乗り物が大好きで、乗り物情報にはいち早く反応するライターいなです。
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新聞を見ていると、静岡県で画期的な電動アシスト自転車が商品化されたという記事を発見。
私の乗り物センサーがビンビン反応しています。これは確認しなくては。
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▲画期的な電動アシスト自転車とは
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浜松市南区の『協栄製作所』へやってきました。
協栄製作所は、バイク・自動車のシャーシー部品および足回り部品の製造をしています。
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▲開発部の高田さんと平口部長(左から)
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画期的な電動アシスト自転車を作ったお二人。
設計は高田さんが担当し、営業は平口部長が担当。
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▲まさかの4輪車だ「電動アシスト付き4輪車 けんきゃくん」
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3輪車は自転車屋などで見た事ありましたが、4輪車です。
「高齢者が乗りやすいように、また転倒のしにくさから4輪車を作りました。」とのこと。
4輪車というのが画期的ということなのでしょうか。うーん、それだけだと、あまり画期的でもないような…ん?
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▲この後輪車軸の間にあるパーツはもしや
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「車軸の間にある円筒形のパーツ(写真青矢印)はもしや、デファレンシャルギア!」と私が驚きの声を上げると
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「3輪以上になると、内輪と外輪の回転が同じ場合、曲がりたい方向の内側になるタイヤの回転が足りず、
旋回性能が落ちてしまいます。後輪にデファレンシャルギアを組み込み、旋回がスムーズに行えるよう配慮しました。
ただ、これほど小さなデファレンシャルギアが業界でも見当たらず、当社で専用設計し、中国のデフメーカーに
製作依頼しています。」
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と平口部長は当たり前のように話していますが、
デファレンシャルギアは製造コストを大幅に跳ね上げるパーツで、自転車に3輪以上が少ないのは、
このデファレンシャルギアのせいだと言っても過言ではないと思います。
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▲片側の車輪に力がかかって止まっても、もう片方の車輪には動力が伝わっています(上動画)
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とはいえ、デファレンシャルギアが良くわからない人も多いと思います。
簡単に言えば上記動画のように車軸でつながっている二つの車輪の回転数が常に同じになるのを防ぐ装置
と考えてください。
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動力を伝える為、軸でつながった2つの車輪は、回転している状態で片方の車輪に力がかかり停止すると、
もう一方の車輪も連動して停止していまいます。
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3輪車や4輪車などが曲がろうとすると、駆動する2つの車輪のうち内側の車輪はほとんど回転しません。
そのとき、動力を伝える軸が単純に車輪をつないでいると、外側の車輪までが回転しなくなるため
進むのに、とても強い力が必要になる、すなわち自転車の動力、ペダルが重くなってしまいます。
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デファレンシャルギアを軸に組み込むと、軸を通して車輪に力を伝えつつ、
曲がるときに片方の車輪に力がかかっても、反対側の車輪が動力を受け取り回転するので、
スムーズに旋回できるのです。
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4輪の自動車がスムーズに曲がれるのも、これが付いているからなんです。
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▲このスポーク(ホイールの中心から外周へ伸びている棒)の奥に見える円盤はまさか
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ディスクブレーキです。一般的な自転車はタイヤのリム(ホールのタイヤに接している外周の部分)を両側から
挟み込んで停止させるVブレーキが主流ですが、これは4輪とも全部ディスクブレーキ。
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ディスクブレーキの特徴は、雨天に強く、異物混入しにくい事が挙げられ、
制動力(減速あるいは停止を行う動作)の安定性は申し分ないでしょう。
ただ、デファレンシャルギアと同じくコストがかかるパーツなので、とても贅沢な装備と言えます。
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「製品開発というのはコストとの戦いです。やりたいことを全部詰め込めば製品の価格は、
とても高価になってしまいます。その中で妥協案を探しながら作っていくのですが、
進む、止まる、曲がるという車両原則は安全の原則なので、一切の妥協をするべきではないと考えました。」
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すごいぞ協栄製作所。きっとそんなことはどんな企業でもわかっているんでしょうけど、
それでもコストを優先し、真っ先に妥協するところなのではないでしょうか。
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▲本邦初公開
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新型の「コントローラースイッチ」も見せてもらいました。
旧型と比べ一回り大きくなり、スイッチ類が押しやすいよう、使い易さに配慮し設計されています。
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▲くるくる回る~(上動画)
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私の場合バイクの感覚が強いせいで、どうしても重心移動をしてしまい「あれ?曲がらない。」と感じる瞬間が。
4輪なので自動車と同じようにハンドルを切らなければ曲がらないのはあたりまえ。
倒立型ハンドルのおかげで、ハンドルに意識をもっていくのは難しくありません。
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▲試作段階には三輪車も
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4輪車の形になるまでには様々な試作があったそうで、こちらはそのひとつの3輪車モデル。
デファレンシャルギアも無く、ブレーキは一般的なVブレーキ。
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▲ま、曲がらない(汗)
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ペダルが重くて、足にどんなに力を入れても進む気配がありません。
デファレンシャルギアがないと、こうなります。
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▲乗りやすさもさることながら楽しいぞ
乗りやすさ、安全性にこだわった電動アシスト付き4輪車 けんきゃくん。
これだけの装備を、市販出来るところまでコストダウンした技術力はまさに画期的。
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乗っても楽しいし、見た目もかわいい。私も1台欲しくなってしまいました。
スピードが出るわけでも、自動で走るわけでもありませんが、この楽しさは実際に乗ってみて、
ペダルをこいでみないとわからないと思います。
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しかし、取材に行くたびに欲しい欲しいと言ってる気がするな。
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、※この記事は2013年8月に公開しました
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『株式会社協栄製作所』
所在地:浜松市南区金折町1417-10
TEL:053-425-2511
URL:http://www.kyoei-seisaku.co.jp/
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