彫刻刀を持って学校に行けば、傷だらけになって帰って来ました。
不器用さには定評があります、ライターげんです。
大井川流域まちかど博物館でも取材した、川から流れてきた木材を使って、作品を手がける川根本町の『流木工芸』。
筒井さんがとっても大きな作品を作ったという情報を耳にし、再び行って来ました。
その作品は、ブルーシートをかけられてトラックの荷台の上に鎮座していました。
ブルーシートを除けてみると、出てきたのは大きな山!(上写真)
まるで富士山のようです。
「特にこの山だとは決めていないんだけど、そうだねぇ、お客さんもこれはデッカイ富士山だなぁ~って言う人が多いよ。
見る人によってイメージが変わるかもしれないですし、それもなかなか面白いじゃないですか。」
▲ 精巧なジオラマを見ているみたい!
山の表面にある穴を覗いてみたら、本物の山道や洞窟のよう!
筒井さんは、作品を作る時に確固たるポリシーを持っています。
それは、自然を活かすということ。
なるべく手入れはせず、川から流れてきた状態のまま、どんな風にこの木は活かせるのかを念頭に、
作品を仕上げていきます。
▲ まるで雪で覆われているかのような渓谷(※雲は私が書きました)
どんな手入れをしていくのか?
「朽ちていた部分をチェーンソーで切り取ったり、虫が入ってこないようにしたり、あとはヒビを見えないようにする
等していきます。ちなみに、今回の作品はおよそ15年前(1998年)くらいから手入れをしているんですよ。」
え、15年も前から?!
「これは、大井川のテトラポットに乗ってたのを拾ってきたんです。たぶん伊勢湾台風(1959年)で増水した時に
乗ったと思うんだけどね。で、どこかで埋まってたのかなぁ、ボコボコになってて面白そうな形してたからさ、
何かに使えるんじゃないかと思って、引っ張り出して置いておいたわけですよ。」
それから数年の間、置かれたままにされていた木材ですが、1998年頃に筒井さんが作品にしようと思い立ち、
加工を開始。
▲ 山肌を削る作業
「私はいつも作品を仕上げる前に、この木は何になるんだろうかってイメージして作るんですけど、見た瞬間、
これは山だなって。だから、山肌になる部分をうまい具合に削ってやったんですよ。拾ってきたそのままの状態だとね、
彫りが深いところと浅いところとでは色が違うので、時間の経過で色がどちらも同じになるように、今になるまで待って
いたんです。」
今の山肌の美しさになったのは、15年も前から筒井さんが手入れをしたからなのでした。
我慢が苦手な自分だったら、そんなに待てないですよ!
「まぁ、好きでやってるからねぇ。儲けとかそんなん考えてたら遊び心を持った作品なんかできないですからね。」
筒井さんは昔から山や木がとても好きでした。
それが高じて、静岡営林署(現在の静岡森林管理署)に勤めたほどです。
▲ 好きが高じて作品作りへ
「昔はよく大井川に出かけては、流れてくる木を拾ってきたね。
この木からどんな作品が生まれるのかなって考えながら。
若い頃は、水が胸の所まで浸かってしまうような場所でも、ズブ濡れになりながら木を引き上げたものです。」
そこまで熱中していたんですね。
ちなみに、このケヤキを樹齢500年~600年のものと筒井さんは見ます。
樹齢も長ければ、作品を完成させるまでの時間も長い、手間をかけた作品になりました。
▲ 樹脂を塗って完成! 雄大な自然を感じさせます
高さ105cm、幅210cm、奥行95cm、重さは何と170kg!
当然ですが、とても持ち上げられません。
流れるような山肌に、自然にできた渓谷。
皆さんは、どんな山に見えますか?
「自分がまだ自由に動けるうちは、色々なものを作っていきたいと思っています。
良かったら遊びに来てください。」 と筒井さん。
今度は流木からどんな作品が生まれるのでしょうか?
楽しみですね!
※この記事は2013年12月に公開しました
『流木工芸』
所在地 : 静岡県榛原郡川根本町上長尾768-1
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連絡先 : 0547-56-0398