幼少の頃、よく祖母に連れられて静岡県内の色々な所を回っていました。
中でもSL(蒸気機関車)に乗ったことが忘れられず、出かける度に乗りたい乗りたいと泣き喚いていました。
大人になってから大井川鐵道のSLだったと分かり、感動したライターげんです。
電車を自分で運転したいって思ったことがある人は意外に多いんじゃないでしょうか。
「SLの運転士になりたい!」と頑張っている女性がいるという情報を得て、大井川鐵道で同社初の
女性運転士となった、萩原愛さんを訪ねました!
男性が多く務める職種だと思いますが、どうしてこの道を選んだのでしょうか。
高校生の頃、電車通学だった萩原さんは運転士の姿を見る機会が多くありました。
「後ろから見ていて、私もあんな風にできたらなぁと。そう思ったことがキッカケでした。」
萩原さんは平成20年(2008年)3月、『大井川鐵道株式会社』に入社。
「大井川鐵道に乗った時、運転士の方が子どもに(制服の)帽子を被せてあげたんです。
そんなこともあって、あ、ここ、いいなって。」
入社後は事務職や駅務職に携わりました。
▲ 大井川鐵道営業部広報担当の山本豊福(とよふく)さんに聞いてみると
「我々は最初、彼女を総合職として採ったつもりだったんです。ところが本人から運転士になりたいという強い
思いを聞きました。運転士には優れた判断力と機敏な対応力が必要です。萩原はのんびりおっとりでマイペース
な子に見えましたので、それを聞いた時はそりゃあ驚きましたよ。正直な話、運転士になっても大丈夫なのかなって。」
運転士になるためには駅務員や車掌などの経験を経てから、運転免許を取るための学科試験と実技試験を
突破しなければいけません。
「基本的には一発勝負です。それで運転士になる適正があるかが判断されます。また、車掌の段階で日常的に
業務における立ち振る舞いをチェックされていますので、その点は厳しいですよ。」と山本さん。
見事、学科試験を突破した萩原さんは、平成25年(2013年)6月に実技試験にも合格。
同年8月から、ついに電車の運転士として独り立ちを果たしました。
「彼女には相当な熱意があったんだと思います。」と山本さん。
「私1人の力ではありません。これは多くの人達の力添えがあってできたことだと思っています。
先輩達にいっぱい迷惑かけたなぁって思うのと同時に、運転士としての責任も感じています。」と萩原さん。
1つ1つ指さしをして確認作業する様子は真剣そのもの。
「前方、よし!」、「踏切、よし!」と運手席で力強い声が響きます。
▲ 車内アナウンスも1人でこなす
「当然のことですが、とにかく安全第一です。基本動作をしっかりこなしていき、前方確認、速度を読み、
ブレーキ動作を確実にこなしていくことに気を付けています。」
対向列車が遅れていても慌てずに、乗客に状況をアナウンス。
萩原さんは運転士になってからまだ3ヵ月(取材時)ですが、一挙一動がとても落ち着いています。
その冷静さをぜひ私にください。
乗客の安全を担っている萩原さんが気をつけているのは体調管理。
「もともとイタリアンが好きでしたが、最近は和食にハマっています。納豆とかよく食べていますよ。」
生活習慣はもちろん、食にも気を遣っているようです。
▲ ワンマン運行だからこそのコミュニケーション
大井川鐵道はワンマン運行をしています。
この時に生まれるコミュニケーションも萩原さんの楽しみの1つ。
ワンマン運行・・・乗車の際に整理券を取り、降車する時に先頭車両にある運賃箱で精算する方式。
「やっぱり人との会話は楽しいですよね。ワンマンだとお客さんと触れ合えることができるので、その点が良かった
なって思います。」
▲ 乗客が降りてからも
終着駅に着き、乗客が全員降りてからも業務は終わりません。
落し物が無いかをチェックしたり、座席やカーテンを直したりと車内を歩き回ります。
今度電車に乗った時は座席の位置やカーテンを忘れずに直しておかなきゃ!
その後は次の発車に向けて、わずかな時間で準備を行います。
テキパキと物事をこなしていく様子は、見ていてとても気持ちがよかったです。
そんな萩原さんは、雑誌や新聞、テレビやラジオに引っ張りだこ。
もしかしたら萩原さんの様子を何かで見て「私も電車の運転士になりたい!」と思う女の子が出てくるかもしれません。
そのことを話してみると、今まで真剣な表情で業務をしていた萩原さんが思わずにっこり。
「もしそうなったら、それはとても光栄で嬉しいことです。もし、そういう方がいらしたら、諦めないでと伝えたいです。
私は感じていませんが、もしかしたら理想と現実のギャップとか、そういうのも感じるかもしれません。
色々自分なりに工夫をして、前へ進んでいってもらえたらと思っています。」
諦めずに、運転士になりたいという想いを持ち続けた萩原さんだからこその言葉ですね。
▲ 車窓から見える茶畑
「沿線にある温泉に行くのもいいですね。ぜひ大井川鐡道をご利用ください。私のオススメは、抜里(ぬくり)駅と
家山(いえやま)駅の間にある茶畑の風景です。緑がきれいで、運転していても気持ちがいいですよ。」
萩原さんが目指すのはSLの運転士!
SLの運転士になるには、現在の運転士業務を継続しながら、また違う運転免許を取る必要がありますし、
ボイラー技師の資格も必要になる等、道のりは長く、難関です。
「とにかく今は運転技術を磨いていきたいです。特にブレーキ技術を高めたいと思っています。
これからも安全で(お客様が)快適に感じる運転になるように頑張っていきますので、よろしくお願いします!」
目標を持って、それに向かって真剣に努力をしている萩原さん。
SLに乗った時、運転席で萩原さんの姿を見かける日が楽しみですね。
※この記事は2013年12月に公開しました
『大井川鐵道株式会社』
所在地 : 静岡県島田市金谷東2丁目1112-2
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TEL : 0547-45-4111(代表)
0547-45-4112(SL受付)
0547-59-2137(井川線)
URL : http://www.oigawa-railway.co.jp/index.htm