お茶屋さんで見かける茶箱。
見かけることは多いけど、一体どうやって作られているんだろう?
そんな疑問がずっと頭の中にありました。
私、ライターゆっきぃは、茶箱を作り続ける職人さんに会う為に
掛川市にある『鈴木製函所(すずきせいかんじょ)』へやってきました。
茶箱とは・・・葉茶を運送・貯蔵するのに用いる大形の木箱
創業は明治時代末期。(現社長も何年かはわからないのだそう)
入口に木材が立て掛けてあったので一目で「ここだ!」とわかりました。
「こんにちは~!」と元気よく突入!
作業場に入るとふわっと木の香りがします。とっても心地いいな~。
明治時代から続く鈴木製函所。清吉さんは3代目です。
20歳の時から茶箱作りを継ぎ、現在81歳。
「仕事は、教えてもらったというよりも、ずっと幼いころから見てきたから、見て覚えたようなもんさ。」と清吉さん。
創業当時は茶箱ではなく、鮮魚箱や、イチゴ箱、メロン箱など、主に農産物を入れる木箱を作っていたそうです。
(木箱とは、茶箱と作る工程はほとんど同じだが、製材を組立て、カンナがけはせずに釘で打つシンプルなもの。)
そして、大正10年頃から徐々に木箱から茶箱へ移行していきました。
さっそく茶箱を作りを見せて頂きましょう!
茶箱で使用している木は静岡県産のスギです。
「スギの木は木目に色がついているところが魅力ですね。モミの木とか真っ白な他の材料を使うと縁起がよくないよね。
棺桶とか。若い頃は左手に何本も釘を持ち、打ちながら次の用意してたもんだけど、
今じゃ1本ずつ取りながら打っているよ。歳のせいかな?」と笑う清吉さん。
ゆがみが出ないようにするため、晴天時に1ヶ月~1ヶ月半天日干しをして乾燥させたスギを、
それぞれのパーツごとにサイズを揃えてカット。
機械でカンナがけをして均等な厚さに揃えたあと、表面を綺麗に仕上げます。
その後、清吉さんが1つ1つを釘で打ち込みながら組み立てていきます。
波釘(なみくぎ)と呼ばれる波型の釘で裏面から板と板を組合わせて1枚の板にしてあります。
接着剤ではなく、「釘細工」と呼ばれる組み立て方で茶箱を作ります。
茶箱を組合わせる時に気を付けているのは、木と木を組合わせる際に、つぎ目が重ならないようにすること。
つぎ目をずらす事で強度が増すのです。重い物を入れても箱が開かないようにする為なんだって。
内側に、亜鉛鉄板(通称:トタン)を貼付け、トタンとトタンの隙間を
火で熱したコテを使い、ハンダを溶かしながら接着させます。
銀色の棒状のものがハンダですよ。
トタンを内側に張る事で、外部からの湿気や、匂いを防ぐ効果があります。
防湿効果があるんだって。
塩酸を棒で接着部分に付けてから、ハンダとコテを使いすばやく接着させます。
塩酸を付けてからでないとハンダがくっつかないのだそうです。
ハンダ付けってなんだか楽しそう!
「なかなかやってくれる人がいないんだよねぇ。1度若い子が1ヶ月修行に来たけど、上手にできなかったね~。」
と志づゑさん。
志づゑさんは80歳。
長年作業してきたからこそ出来る作業なんですね。
ガチャン!ガチャン!と大きな音をたてて茶箱の蓋の裏側に留め金を打ち込んでいます。
「恐くないんですか?」と質問すると、
「大丈夫だよ。間違えて手に打っちゃったことがあるけどね。はははっ」と笑う愛子さん。
きゃー!それは痛そうです!
博子さんが箱に糊を塗りながら何かを貼っています。
これは、和紙です。節の部分や、継ぎ目の部分に貼っています。
「え?何のために和紙を貼るんですか!?」と驚くワタシ。
「和紙を貼る事で、湿気を防ぐだけでなく、箱を丈夫にするんだよ。」と清吉さんに教えてもらいました。
なるほど、これを知らないとうっかり剥がしちゃうところだった!
1つ1つの工程が重要なんですね。
和紙を貼り終えた箱を干しながら糊を乾かします。
蓋を閉めるとピタッと隙間なく重なり合います。手作りの温かみがある茶箱が完成しました。
清吉さんの自宅では、米びつとして使用したりしているそうです。
「1年分をこの箱に入れて保存しているよ。これに入れておけば虫もつきません。」
茶箱の利点「防湿・防虫」の特徴を生かし、着物などの衣料品を入れたり、
カメラのフィルムを入れたりする方もいるんだそうです。
衣料品といえば、滅多に着ないセーターを長年タンスにしまいこんで
虫に食われて穴が開いてしまったという残念な経験が・・・
それって結構ショックですよね。茶箱に入れて保管すればそんな心配もなくなるかも。
意外な使い方にビックリ!
書類を保管するのにも使われているんだって。複数の大学から注文があるそうですよ。
なにやら長い年月を経てきたと思われる茶箱を発見しちゃいました!
「昔のお茶屋さんは、この大きい箱に茶葉を入れ、東京のお茶屋さんに出荷していたんです。」と愛子さん。
箱だけで20㎏。中身が60㎏入る箱なんだって。私も中に入れちゃいそうなくらい大きいんだ~!
なんと腰掛にもなっちゃうんです。
「高さが丁度いいでしょ?」と愛子さん。
「失礼します。」と腰掛けてみると・・・・
おっ!これはお尻にジャストフィット!
こうして使っている浜松市の居酒屋さんもあるらしい。
中にカバンを入れたりするのに便利だね。
スツールとは・・・ 背もたれやひじ掛けのない腰掛けのこと
「こういう使い方もあるんですよ。」と愛子さんが持って来てくれたのがこちら。(上写真)
茶箱に布を貼って、オリジナルの化粧箱に変身!
何年か前に新聞に取り上げてもらった時、茶箱を収納ケースとして紹介したそう。
こんなに幅広い使い方が出来る茶箱だから、全国から注文が入ります。
「ストールや、指輪などの装飾品を入れている人もいますね。」と清吉さん。
特に多いのは女性のお客さん。
茶箱を買って、オリジナルにアレンジしてみるのもいいかも。
インテリアとしても存在感バツグン。私も欲しくなっちゃう!
「茶箱は、手作りだから大量には作れんねぇ~。他に茶箱を作っているのは全国でも1~2件くらいかな。
だいぶ減ったね。生涯茶箱を作り続けたい。」と清吉さん。
この仕事が若い人達にも伝承されて、未来へと受け継がれていけばいいな。
明治時代に木箱から始まり、現代さまざまな用途で使用されるようになった茶箱。
お茶を保管するのももちろんだけど、大切なものを入れて使いたい。
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、※この記事は2013年9月に公開しました
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『鈴木製函所』
所在地 静岡県掛川市横須賀310
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TEL 0537-48-2150
定休日 日曜
URL http://plaza.across.or.jp/~prs66896/index2f.html
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