昨年の夏から消しゴムはんこ作りにハマっている(遅い?)、ライターきゅうです。
飽きっぽい性格ゆえ、作りかけが溜まっている状況。何とかしなければと只今制作中です。
ものづくり大好きな私。伊豆の黒松を使って指物(さしもの)を作っている工房があると聞きつけ、
下田市へやってきました。
『下田脂松細工(しもだやにまつざいく) 嶋崎』の工房があるのは、
「伊豆急下田駅」より下賀茂方面に車で10分ほどの場所。
街中から少し離れた伊豆の豊かな自然が広がります。
※指物とは…釘などを使わずに、木と木を組み合わせて作られた家具・調度品など。また、その技法。
自宅の一室が展示室になっています。電話で申し込めば、いつでも「下田脂松細工」の品々を見ることが出来ます。
展示室に隣接した工房に伺うと、ネクタイピン制作の真っ最中。ニスを塗り乾かしているところです。
1つとして、同じ柄にはならないのが魅力。木目の出方でとても印象が変わりますね。
「下田脂松細工 」の指物師・嶋崎繁明さん
嶋崎さんのお父様もお祖父様も指物師。18歳で先代のお父様のもとに弟子入り。
幼いころから仕事を見て育ったそうです。
2人の妹の机や引き出しを作るところから勉強が始まったとか。
「引き出しのはめ込みの仕組みを勉強できたり、木を真っ直ぐに削る練習になりました。」
「材料とする木ありきで制作する仕事。本番に使う木では失敗できないです。」
細やかで慎重な作業を要するのですね。
銘々皿(めいめいざら※菓子等を取り分ける皿)が出来るまで(順序1から8)
使用する黒松は、切り出してから最低3年は日陰で自然乾燥させ、
材料として必要な大きさにカットしてからも3ヶ月は乾燥させます。
四角く切り出した木が順を追って出来上がっていく様子がわかります。
ノミで内側を彫り、外側の底の部分もノミで平らにします。さらに横に丸みを付け、内側外側を磨きます。
出来上がりのふちの部分の厚みは1ミリもありません。
黒松は脂分(松やに)の多い木。木目も複雑なので扱いづらく、細工をするのに手間がかかる素材。
しかし、その木目や松脂が独特の透け感と模様となり、他にはない品となるのです。
釘を一切使わず、「ほぞ組」という技法で作られています。様々な木目が本当に美しい。
1999年には静岡県から依頼され天皇皇后両陛下への献上品を作成。(上記写真)
脂松細工の真骨頂。松の木目が美しく現れた「硯箱」。年月が経つと松脂が滲み出てくるそうです。
こまめに手入れ(拭く)をすると、艷やかな光沢が出て美しさが増します。
濃い茶色の部分が松脂部分。光に当てると透けるように見えます。
琥珀のようですね、と尋ねると「琥珀は松脂の化石だからね。」と嶋崎さん。そうか、成分は一緒なのか。
円柱に切り出した黒松の板一枚から彫り出してあります。つなぎ合わせは一切ありません!
均一な厚みに彫り出す職人技です。
新作の富士山のネクタイピンとカフス。お手頃価格なので私にも買えそう。父へのプレゼントにしようかな。
静岡市にある『駿府匠宿』でも販売しています。木目を組み合わせ、富士山に雪が冠ったような姿を表してます。
こちらは黒松ではなく欅の木を使った「短冊箱」。写真の上部に写っている木を材料に作られたもの。
並べてみると、使った木材の特性が生かされている事がわかります。
木の特性を見極め、作品に反映するのも長年の経験から。すごいですね。
終始笑顔の絶えない嶋崎さん。
これからの夢は「先々代や先代が集め残してくれた木材を作品にして、世に出していきたい。」との事。
日本でここだけの下田脂松細工。代々受け継がれた技術を駆使し、
それぞれの木の表情を活かした、美しい指物を生み出している職人さんでした。
※この記事は2013年9月に公開しました
『下田脂松細工嶋崎』
所在地:下田市大賀茂1057-2
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TEL:0558-22-6689
定休日:なし
URL:http://www.geocities.jp/shimazakikoubou/