夏になるとめん類とアイスがあれば生きていける、 ライターきゅうです。
暑くなってきて、ツルツルめんが恋しくなってきた今日この頃。
県内で唯一手延べの製法でめんを作っている会社があると聞きつけ
浜松市北区引佐町の『遠州いなさの郷』にやってきました。
『新東名浜松いなさインターチェンジ』を奥山方面へ2kmほどのところに、この看板があります。
車で約5分くらい。ゆっくり走って見落とさないよう注意です。
不覚にも案内看板を見落とし、田んぼと茶畑の中をさまようことに。
数分後、風光明媚な地に建つ『遠州いなさの郷』に到着しました。
手延べめんとは、小麦・水・塩を配合してできた塊を切らずにひたすら延ばして細くしていき、めんとする製法。
太さが変わると、そうめん、ひやむぎ、うどんと呼び名が変わります。
切ることなく一本で延ばしていきます(写真提供:いなさの郷)
めんの出来上がりまでには3日間かかります。
まず1日目は、生地を作る翌日の湿度や温度を予測して、小麦に混ぜる水と塩の量を決定します。
2日目はその配合を元に、朝4時からめんになる生地を作ります。
延ばした生地を重ね圧縮を何度も繰り返します。また、その間熟成も繰り返します。
その後、表面の乾燥を防ぐため食用植物油を表面に塗りながら、よりを入れて延ばしていきます。
こうすることにより、めんが切れにくくなり弾力がつくのだそうです。
手打ちめんのように、生地を平たくして細く生地を切るのではなく
生地を一本で延ばすことが手延べめんの特徴です。
最終的には、1kgの生地の塊が1,200mほどの麺に仕上がります。スゴイ長さですね。
上にゴザをかけた箱の中で熟成させると、小麦の成分・グルテンが粘りを増します。
この熟成がめんのコシや延びを左右します。タイミングを見極め、この後延ばしていきます。
めんは2本の棒の間に八の字に掛けられています。
めんの掛かっている棒の片方を機械の上部に固定し、もう片方の棒を下へ引っ張り
180cmほどの丈まで延ばしていきます。
3倍以上めんが延びて、出来上がりの細さに近づいていきます。
すごい弾力と反発力。しっかり腰を入れて引っ張らないと延びません。
少し延ばすだけでも力が要ります。
▲加藤道夫さんの熟練の技(上動画)
上下の棒に八の字にかけられためんとめんの間を剥がして延ばす作業をみせていただきました。
上から下へ、下から上へ。箸を巧みに動かして
めんがパッ、パッ、パッっとキレイに分かれていきます。
この作業で貼り付いていためんが全て一本ずつに分かれます。
仕上りは涼しげな貴婦人のようなたたずまい。延ばすほどに色白のめんになっていきます。
ここから乾燥室に入ります。午後から乾燥に入り、3日目の午前中に完成です。
夏であれば、1日で300kg分のめん(3,000食分)乾燥させるそうです。
▲ある程度の湿度を保つためにセンサー管理で水を噴霧しながらの乾燥です
半生タイプのめんは、一度乾燥させた後、もう一度この水を噴霧。
室内の湿度を保ちながら除々に半生の良い状態に持っていきます。
本当に手間がかかるのですね。
2本の棒にかけていためんの上下を切り、乾燥室の隣の作業所ですぐにパッキング。
それにしても早業。めんを掴んで、クルクルっとまとめて、袋詰め完成。
珍しい半生めん。日持ちは3ヶ月程。他に乾めんのタイプもあります。
見るからにしなやかで、しっかりとした存在感のあるめんです。
▲二代目の加藤通夫さんと三代目の加藤剛(たけし)さん(左から)
「めんの状態が日々同じ事はありません。熟成のタイミングが大切。子どもを育てているみたいです。」
と加藤剛さん。
手間を惜しまず、手塩にかけた子どもを送り出すように、毎日めんを作り、出荷しているのですね。
袋の裏に書いてある通り、1分30秒きっかり茹で、キリッと冷やしていただきました。
ツルツルとした喉越しで、もちっとした弾力と歯ごたえは今までに経験したこと無い食感。
めんの一本一本に主張があって、食べ終わった時の満足感もあります。
手延べめんの特徴は断面が楕円だということ。つゆの絡みもよく、パスタ代わりなどにも使えそうです。
お料理の苦手な私ですが、何だかめんレパートリーが増えそうです。
※この記事は2013年7月に公開しました
『遠州いなさの郷』
所在地:浜松市北区引佐町谷沢146
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TEL:053-543-0168
定休日:日曜、祝日