子どもの頃、魚はにぎり寿司の上に乗っている魚しか食べることができなかった、ライターきゅうです。
おかげさまで今は何でも食べる健康優良ライターです。
御殿場市の郷土料理「みくりや箱ずし」を「御殿場みくりやそば」のようにご当地料理として
復活させようとしているという情報を聞き、三島市にある、日本大学短期大学部食物栄養学科へやってきました。
日本大学短期大学部食物栄養学科へやってきました
大学のキャンパスに足を踏み入れるなんて、何かドキドキ。むかしむかしの学生時代を思い出しますよ～。
授業覗いてみたいな。
日本大学講師 渡辺洋子先生
出迎えてくれたのは、日本大学短期学部食物栄養科・専攻科食物栄養専攻の講師を務めている渡辺先生。
翠月古流華道家元でもいらっしゃいます。
「みくりや箱ずし」って何ですか？
「木の箱に酢飯を詰めて上に具材を盛りつけた、お祝いの時やお祭の時に作って振る舞う郷土料理です。
御殿場市でも30年ほど前までは作られていました。具材は少し違いますが熱海にもあるんです。」と渡辺先生。
熱海にもあるとは。山間地の御殿場と海岸地域の熱海とでは、箱ずしの味付けも少し違うそうです。
渡辺先生はこの郷土料理が途絶えてしまわぬよう、今、若い人に伝えていかなくてはと考えて、
御殿場市で様々な提案をしています。
今日（取材日）は食物栄養科の室伏ゼミ のプロジェクトMの2年生の学生さんと一緒に
「箱ずし」を作っていただけることになりましたよ。楽しみだな。
※プロジェクトMとは…専門的知識や技術をより深く追求し、実践的に社会に役立つ事業として、プロジェクトの目的に
協賛する企業・団体等と連携し、地産振興を目指して人々の暮らしに貢献する事業を推進している。
2013年は無農薬でダイコンを育て、「日大たくあん」を作り好評を得ました。
この中に100年以上前の木箱があります、どーれだ？
みくりや箱ずしを詰める木箱は、渡辺先生のお宅に残っていたものを真似て、
御殿場市のNPO法人「土に還る木・森づくりの会」の方々に間伐材を利用して作ってもらったもの。
底板が抜けるようになっていて、出来上がりを抜けるようになっているんです。
昔は、御殿場のどこの家庭でも、箱ずしをお祝いの時などに作っていたそうです。
具材が揃いました
10世紀～11世紀頃、御殿場市は「神の台所」の意である、「御厨（みくり・みくりや）」と呼ばれ、
伊勢神宮の台所をまかなうため物産を調進する地域でした。
山梨から来る山の幸、駿河湾から来る海の幸 が集まってきたのだそうです。
そのため具材もバラエティー豊か。サバ（水煮を使用）や桜えび、マグロの漬けも具材に入るそうです。楽しみだなぁ。
※調進…注文に応じ、品物をととのえて差し上げること。調達。
室伏ゼミ プロジェクトMのゼミ生
ゼミ生たちが調理を始めました。白衣を着ていると何だか皆さん先生みたい。
ニンジンの細切りをカツオ節のダシ汁で煮たり、サバを甘辛くそぼろにしたり。
今日初めて、箱ずしを作るのに、とっても手際がいい～！
さすが渡辺先生
薄卵焼きをくるりんとひっくり返す技。じっと見ちゃいましたよ！
先生が各所で、作るコツや包丁の使い方などを教えてくれていて、私も勉強になりました。
いつ仰ぐの？今でしょ！
こちらでは酢飯を調理中。皆さん知ってましたか？
酢飯を作る時は合わせ酢を炊いたご飯に回しかけ、切るように混ぜ、混ぜ終わってから仰ぐのですって！
混ぜながら仰ぐと、酢の香りが飛びすぎてしまう。また1つ勉強になりました。
調理した具材が出揃いました
海に面した熱海の箱ずしでは、サバの鮮度が良く身の色もきれいなため、食紅で薄ピンクのそぼろに。
それに対し、海から遠い御殿場のそぼろは醤油色に煎り上げます。
こんなところからも、海岸部と山間部の生活の知恵や違いを伺い知ることが出来ますね。
皆で楽しく箱詰め
日本大学のNのマークの入ったエプロンを貸してもらい、私も参加させてもらいました！大学生気分（?!）。
彩り良く盛りつけられるかな？
楽しい～！
盛り付け方に決まりはないので、具材を斜めや市松に盛りつけたりと皆楽しそう。
個性豊かな箱ずしが出来上がってきましたよ。
完成です！
やはり先生の盛り付けは、シンプルな中にも色のバランスが美しい！海の幸、山の幸たっぷり。
水かけ菜染のハンカチを敷いて
ダシを取った昆布とカツオ節の煮付けやお吸い物、酢の物、御殿場名産の水かけ菜を添えて。
下に敷いたハンカチは渡辺先生が考案した、水かけ菜染めなんです。
淡い色調の葉色が、箱ずしを引き立て、春の訪れを感じさせます。
フタをしてひっくり返して、下の台を抜いて盛り付けたり、切って出してもいいそうです。
その場の雰囲気で色々に演出できますね。
いただきま～す
お待ちかねの試食タイム！写真を撮ってもらう前に待ちきれずに食べてしまい、
私の作った完成品をお見せ出来ませんでした。
サバのそぼろも甘じょっぱくて美味しい！
生のサバでなくても、サバの水煮でも出来ちゃうので家でも挑戦してみたいです。
彩りもきれいだから、春になったら箱ずしを持ってお花見もいいかも。
学生さんにも感想を聞いたところ…
「色々な具材が食べられていい。色もきれい。そして作っていて楽しかった！」
「御殿場出身だけど、みくりや箱ずしを知りませんでした。また作ってみたいです。」との事。
若い世代が箱ずし作りを体験することで、郷土料理「みくりや箱ずし」が次の世代に受け継がれていくといいですね。
（前列左から） きゅう、室伏先生、渡辺先生、久保田先生、
（後列左から）千葉さん、駒形さん、倉澤さん、土橋さん、成田さん
先生方と室伏ゼミの学生さんと一緒に記念撮影。室伏教授にもお話を伺いました。
「箱ずしは地域によって具材も変わったりしますが、郷土料理として駅弁などにしてみてはどうかという
プロジェクトMから提案をしています。」
駅弁で郷土料理の箱ずしが全国に発信される日も近いかも。
木箱に入った駅弁なんて、ちょっとステキじゃないですか？
※この記事は2014年3月に公開しました
『みくりや箱ずし』
所在地：御殿場市二枚橋230
TEL：0550-82-2769
