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大きくどっしり、そして華麗な『駿河雛人形』  

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あかりをつけましょ ぼんぼりに~♪ お花をフフフフ、フフフフフ~♪
ご~にんばやしウフフフフフ~♪ 今日~は楽しい雛まつり~♪
最近物忘れのひどさに危機感を覚える、ライターげんです。

さて、皆さんの家ではお雛様を飾っていますか?
私は男兄弟なので、縁がありませんでした。
それはそれで、ちょっと寂しい気がします。

そういうわけで、久しぶりにお雛様を見に行こうと静岡市清水区由比へ!

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▲ 駿河雛人形

やって来たのは昭和11年(1936年)創業の『望月人形』。
中に入ると、きらびやかな人形たちがたくさん並んでいました。

正面にデデーンと構えているのは、これはまた立派なお雛様ですね~!(上写真)
「これは駿河雛人形って言うんですよ。」

2
▲ 望月人形 望月勇治さん(3代目)、望月文晴さん(左から)

駿河雛人形・・・?
雛人形にも種類があるのでしょうか?

「えぇ、もともと天神信仰が厚かった時に天神様(菅原道真)を模した練天神(ねりてんじん)という人形が作られ
ていたんです。土に直接彩色をしていたわけですが、時代を経るにつれて衣装を着せるようになりました。
つまり、衣装を着た天神様というわけですね。これを雛天神と呼んでいました。雛まつりと言えば女の子の
お祝いなのですが、この地方(中部地区)では、男の子も3月にこの天神様(天神人形)を飾って祭ります。
男の子の節句と言えば普通は5月なんですが、茶農家が多く、5月がちょうど1番茶の収穫時期に当り、
忙しくて祝えなかったことが理由です。」と勇治さん。

1番茶の収穫時期はどこもかしこも大忙し!
実に静岡県らしい理由ですね。

 

4
▲ 左が駿河雛人形、右が一般的な雛人形の胴体

「もともとこの地方にはお雛様(男雛と女雛)がなく、明治頃までは、雛天神を男女関係なくを飾って祭っていた
そうです。明治以降になると、東京や京都からお雛様(男雛と女雛)が流れてきて、それを受けて天神様の技術と
東京や京都のお雛様の技術を合わせ制作され誕生したのが今日「駿河雛人形」と呼ばれている大型の
男雛と女雛のお雛様です。」

駿河人形を見て最初に驚いたのは、その大きさ。
一般的によく見る雛人形とはサイズがまったく違います。

「そうですね、駿河雛人形の特徴は、まず大きいことです。昔、この地方(静岡市近辺)では稲作が盛んで
藁がたくさん採れました。その藁を用いて胴体を作ったため、大きなサイズになったのではと言われています。」

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▲ 裏を見るとトンビ型に見えるのも特徴

実は座り方にも違いがあります
「一般的なお雛様が楽坐(らくざ)。楽坐というのは、あぐらをかくように座りますが、足を組まずに両足の裏を
合わせて座る座り方です。これは膝が上がることで、 威儀を表しているんです。駿河雛人形がとんび型です。
この座り方は、天神様(天神人形)から受け継がれた形です。」

女性の人形にも、天冠と呼ばれる冠を被っていたり、唐衣から引き腰(2本の飾り紐)が出ていたりと
多くの特徴があります。

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▲ 顔が作られるまで

頭(かしら)が出来るまでの工程についても見せてもらいました。

「ウチでは、雛人形は全て桐塑(とうそ)という粘土を用いた頭を使用しています。最近では大量生産のため、
石膏(せっこう)の頭が多いのですが、桐塑で作られた顔は表情が出やすく、一体一体違った顔になるんですよ。」

完成形はとても人間らしい表情になっていますね!
後は胴体に付け、衣装を着せます。

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▲ 失敗が許されない工程で真剣な表情を見せる勇治さん

胴体を作る上で最も難しいのは最後の「振り」(腕折り)と呼ばれる工程。
人形の手足を曲げてポーズを作っていきます。
失敗したらそれで終わりです。中に針金が通っているので1回折ってしまうと形が決まってしまうからです。」

声を掛けるのもためらわれるほどの緊張感が伝わります。

7
▲ 部品作りで奮闘する文晴さん

人形作りの道に入ってから5年目という文晴さん。
「最初この道に入った時は、お雛様のどこが良いのかが全く分かりませんでした。お雛様の知識を頭に入れる
だけでも大変でした。ですが、1年、2年と人形作りに接していくうちに、雛人形の良さがだんだん分かるように
なってきたんです。私はまだまだ雛人形の部品しか作ることができません。いつか1人で1体の雛人形を作れる
ようになりたいと思っています!」

勇治さんによると、雛人形1体を作れるようになるまでは大体10年くらい掛かるのだとか!
人形作りは繊細で険しい道のりなんですね!

「入った時は、やはり部品作りから始まったのですが、自分がどこの部分の部品を作っているのかさえ
も全く分かりませんでした。人形作りは理解するまでがとても難しいんです。」と勇治さん。

8
▲ 人形作りの現場

「雛人形はもともとは人型のお守りさん。その子に何かあった時、お雛様が身代わりになってくれます。
だから作る時は神聖な気持ちで、そしていかにして優雅に見せるか等、飽きの来ない完成された人形を飾って
もらいたいという想いから色々考えながら作っています。」と勇治さん。

 

9
▲ 普段は朗らか 人形師 望月 明さん(中央)

時には父親であり2代目の明さんの厳しい視線が注がれることも。
「息子たちはよく頑張ってくれています。こういうことはこれから若い人達にどんどん伝えていかないといけない、
そして若い人達がやっていかなければいけないと思っています。私も早く引退したいですね。」と笑う明さん。

10
▲ 家族みんなでお待ちしております!

「正統派で細かな作りをしているお雛様をぜひ見に来てもらいたいですね。ウチはお客さん1人1人に、
雛まつりの原義から作りに至るまでを丁寧に説明いたします。納得をした上で買っていただければと思って
おります。」と文晴さん。

「今後は色んな雛人形を作っていきたいと思っています。昔作られてきた人形を資料から復刻させたりするのも
私の目標なんです。」と勇治さん。

久しぶりにお雛様を見て、懐かしい気分に浸ることができました!
駿河雛人形は実に静岡県らしい伝統的工芸品でした。


※この記事は2014年2月に公開しました

望月人形
所在地 : 静岡市清水区由比北田112-19

大きな地図で見る
TEL : 054-376-0010
定休日 : 無休(12月~5月)、不定休(6月~11月)
営業時間 : 10:00~18:00
URL : http://www.surugahina.com/

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