青色の洋服を着ることが多かった子ども時代。スカートをはいていても男の子に間違われていた、ライターきゅうです。
染物って色々ありますが、草木染めの一種、藍染の工房があると聞き、駿河区にやってきました。
JR東海道線「静岡駅」南口より石田街道沿いに南へ。住宅街の一角、石田神社の向かい側にある、
『増田あいぜん工房』に到着です。
工房で制作された作品の展示・販売をしています。
藍染の藍色はジャパンブルーとも呼ばれ、昔から青の深い色。その染色はどのように行われているのだろう。
店舗裏が工房ということで、早速お邪魔しました。
工房に入って先ず目に入ってきたのは、藍染めに使う染液。
表面は藍色だけでなく、深い紫色、緑色、赤茶など、様々な色が光の加減で目に映ります。
ブクブクと沸いているように見えますが、熱くはありませんよ~!
染液が入っているところは、一畳分程の大きさ。「どの位の深さかというと…」と、増田さんが棒を投入。
棒を引き抜くと黒く変色しているところ(上写真)までが、染液がある高さ。
私ならチャポンと頭からつま先まで、全部浸かってしまう程の深さです。
つまずいて落ちないようにしなくては!
染液の継ぎ足しを繰り返し、60年以上経っています。藍は生き物。手入れも難しい。
時々石灰などを入れ撹拌(かくはん)をしながら、上手く染まるように調整をしています。
先々代から唐草模様の型紙を集め始め、今では2,000種類ほど収集。江戸時代の貴重な型紙も多数。
「唐草模様」と聞くと泥棒の風呂敷柄しか思い浮かばない私(反省)。元をたどると遠く海を渡り、
ギリシャのパルテノン神殿の柱に描かれていた模様が起源とも言われています。
日本には松竹梅や鶴亀、菊など多様の唐草模様があるんです。
まず「型取り」。和紙に図柄を描き、カッターで防染する部分を抜いて型紙を作ります。
上写真のような細かい図柄でも、デザインカッターのみで切るんですよ。
「もっと細かいのがいっぱいあるよ!」と、雅一さん。充分細かいんですけど~!
1枚の型紙が完成するまでには、何日もかかることがあるそうです。
まずは型紙を布(綿)に置き固定し、防染するため防染糊(餅粉)を全面に塗ります。
簡単そうに見えてこれが難しいのです。
まだ、染めてないのに美しい図柄が登場。糊の部分は染色されず、その他の部分が染まります。
この上から、おが屑をふりかけ、余計な粉は払い落とします。
染液に、静かに布を沈めていきます。あまり動かすと染液が酸化し染まりにくくなります。藍って繊細なんですね。
時間の差をつけて染めた所は濃くなっています。
濃く染める場合は、もう一度防染糊を塗り、染める工程を何度か繰り返します。
糊を落とし、乾燥して完成。乾燥させる時に煙で燻して乾かします。
そうすることにより、色が定着し仕上りが良くなります。
藍の葉
藍の葉って見たことありますか?私は初めて見ました。花は薄いピンクの細かい球状が連なった素朴な姿です。
染色には葉を乾燥させ、発酵等の様々な段階を経て使用します。
柔らかい可愛らしい葉から、力強い藍の色が出てくるなんて、植物ってスゴイ!
店舗兼展示室には藍染の手ぬぐいやシャツ、江戸時代から昭和に使われていた図案の型紙などが。
藍は防虫やヘビよけなどの効果があることから、昔から衣類の染色に使われ、戦国時代には藍の色を「勝色」と呼んで
鎧を縫う色糸を染めるのにも使われたそうです。
現代的な感覚を藍染の世界に積極的に取り入れている増田さん。
まさか…と思いましたが、「パイレーツ・オブ・カリビアン」(上記写真)ですよね!
映画からインスピレーションを受け、染め上げた作品だそうです。
月明かりに照らされた、海賊船と海に映る複雑な影。藍色の濃淡だけで表現した作品です。
大作の藍染め暖簾や藍染めと紅型を融合させた、鮮やかな作品も展示されています。
藍の新しい世界
増田雅一さん(上写真)のお父様・増田猪富(いとみ)さんも現役の染物師。
静岡市伝統工芸技術秀士として藍染めの技術指導にも尽力されています。
また、娘さんの増田美佳さんも紅型と駿河藍染めの融合を研究しながら、染物師として活躍中です。
駿河の地で育まれた駿河藍染。「駿河藍染を継承する事」を念頭に、
伝統的な唐草などの図案を巧みに使い、新しい世界を展開している染物師さんでした。
※この記事は2013年9月に公開しました
『増田あいぜん工房』
所在地:静岡市駿河区石田1丁目11-4
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TEL:054-285-6915
定休日:日曜日、祝日
営業時間:10:00~18:00
URL:http://www.aizenkoubou.com/index.htm